教育、学び、そして学校 〜 118

公開: 2024年6月5日

更新: 2024年6月5日

注 118. チベット社会とダライラマ

仏教国であるチベットの社会では、かつて、最高宗教指導者であるダライラマが、最高政治指導者でもありました。そして、ダライラマは、転生(てんせい)と言う形式で、その地位を約600年間、継承し続けてきました。転生は、ダライラマを生きた人の「生まれ変わり」と言う意味です。ですから、前任者のダライラマから学ばなくても、その教えや思想を説くことができます。

ダライラマの後継者認定においては、複数の後継候補者に対して、地位の高い僧侶たちが質問を行い、それに対する回答が、前任ダライラマの答えに似ているかどうかを判定して決定します。それでも複数の候補者が残った場合には、くじ引きで決定すると言う例もあったとされています。ただ、チベットと清国が協力関係にあった時代には、清国の意向によって、形式的に「くじ引き」で、後継者を決定したと、記録された例もあったようです。

20世紀になり、チベット社会の民社化の波によって、宗教上の指導者と、政治的指導者が分離され、ダライラマは、純粋に宗教的な指導者とされるようになりました。しかし、チベット社会では、人々は、今でもダライラマを民衆の指導者として認識しているようです。

現在のダライラマ14世は、そのような過程を通してダライラマに就任しましたが、中国共産党との政治的対立から、チベットを離れ、亡命しました。しかし、それでも以前からと同じように、チベット社会のリーダーとして、反中国の立場を守り、依然として、チベットの人々を導いています。

参考になる資料